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研究の概要


 さて、このページでは透明骨格標本の解説をしたいと思います。


1.透明骨格標本とは


 まず、「透明骨格標本」について紹介していきたいと思います。
 簡単にこの標本について説明すると「軟骨・硬骨をそれぞれ青・赤紫色に染色し、筋肉等のタンパク質を殆ど崩した後、水分をグリセリンで置換することで骨格組織が透けて見えるようにした標本」ということになります。最近は書籍等の影響により「透明標本」と呼ばれることが多いようです。


 具体的には、軟骨内に多く含まれる「コンドロイチン硫酸」と、「アルシアンブルー8GX」という薬品が結合することで軟骨が青く、硬骨内に多く含まれる「リン酸カルシウム」と「アリザリンレッドS」という薬品が結合することで硬骨が赤く染まります。
 つまり、コンドロイチン硫酸が存在する所は青く、カルシウム(リン酸カルシウムでなくても染まるようです)が存在する所は赤く染まるため、厳密には軟骨と硬骨のみが染まるわけではありません。(また、過染色により正確に染色されないこともあります。)


2.具体的な手法


注:以下は科学部生物班が実際に実験を行った内容を紹介するものであり、この手法や紹介しているリンク先に対して何らかの保証をするものではありません。なお、使用する薬品は価格・入手ともに一般的とは言い難く、中には劇薬である物も存在します。実際に製作に取り組まれる際は十分に注意し、自己責任でお願い致します。


最低限用意する薬品(二重染色)
・ホルマリン
・エタノール(95%以上)
・氷酢酸
・アルシアンブルー8GX(水溶液になっているタイプが手頃)
・アリザリンレッドS
・KOH
・グリセリン(試薬一級)
・チモール
・重曹
あると便利な薬品
・トリプシン
・四ホウ酸ナトリウム
・オキシドール
・アセトン
・抱水クロラール
(量に関しては、文中の説明で代えさせて頂きます。)


@ホルマリン固定

 ホルマリンで標本を固定します。市販のホルマリンの10倍溶液で十分だと思います。
ホルマリンが酸化するとギ酸が生じるため、あまり長く漬けていると硬骨のカルシウム分が流れでてしまい(脱灰)、硬骨染色がうまくいかないことがあります。あらかじめ重曹等を溶かしておき、ギ酸が生じると同時に中和されるようにしておく方法もあります。
 しかし、この方法を使うと軟骨が上手く染まらないことがあると書かれている文献もあるため、生物班では普通のホルマリンを利用しています。
 3日は液浸し、しっかり固定した方が良いと思われます。固定された身は硬くなり、姿勢を動かせなくなるため、標本のヒレを広げたり、口を開けたりするのはこの作業の前に行います。
 液浸後は、流水に1晩浸しておきます。
なお、これら一連の作業が終わったところで、皮が剥げる所はできるだけ剥いでおきました。


(以下のA、B、Cは硬骨染色しかしない場合は不要です。)


Aエタノール置換

 標本の水分をエタノールで置換します。Bで紹介する軟骨染色の染まりを良くする作業です。
まず50%エタノールに標本を1日液浸します。次にほぼ100%のエタノールに標本を1日液浸。
念入りに作製するならさらにもう一度100%エタノールに液浸して完了です。


なお、薬品の浸透性を高めることを目的に、軟骨染色の前にトリプシンで少し透明化し、そのあとエタノール置換と軟骨染色をし、中和したあとさらに透明化を進める、という方法をとることもあります。


B軟骨染色

次の溶液を用意します。
・軟骨染色液(70mlエタノール+30ml氷酢酸+アルシアンブルー8GX)
生物班では水溶液タイプの色素(アルシアンブルー液)を使用してます。色素の量に関しては、色が少し濃い目に付いたかな?程度で目分量です(笑)。また、この液は化学変化を起こしやすいので、使用前に作るようにします。
 液の量を変えるときは、薬品の混合比は変えないようにします。液浸時間は半分をめどに、全体が青めになったくらいが丁度よいのではないでしょうか。脱灰には注意をします。


C色素抜き・中和

 あまり強く全体が青くなってしまっている場合は、エタノールに浸けて出来るだけ色素を落とします。酢酸臭が強くなったら液を交換しています。
 これが終わったら飽和四ホウ酸ナトリウム水溶液に液浸します。少し時間をおいて、酢酸臭が感じられるようなら液を交換し、完全に中和します。


なお、生物班では中和に重曹を用いたことがありました。これは生物班の完全オリジナルとなります。(だってそこに重曹がたまたまあったから)
ただ、重曹を使うと中和時に二酸化炭素が発生してしまいます。特に透明化を軟骨染色前に行う場合、肉の隙間にたまって気泡ができやすいため、使用は控えたほうがよさそうです。


D透明化

まず、トリプシンを使う場合、
・(35ml飽和ほう砂水溶液+65ml水+トリプシン適量)
をつくり、標本を液浸、温度を35℃に保ちます。夏場は室温で大丈夫でしょう。それ以外はコタツを使うなどの工夫が必要です。
液がかなり汚れたところで腐らないうちに交換します。トリプシンの量は、理想は100mlに1gなのですが、適宜分量を調整して対応します。
 KOHで透明化するならば、1%程度の水溶液を用いて、ゆっくりと根気よく透明化を進めます。(冬場以外は冷蔵庫に入れておくといいのかもしれません。でないと筋肉がひび割れたり、ドロドロになったりします。)とにかく根気が必要です。
 どちらにしろ、完全に透明にはしなくてよく、脊椎が大体見えれば上出来です。


E硬骨染色

抱水クロラールがある場合は、
・硬骨染色原液(1%抱水クロラール水溶液120ml+アリザリンレッドS100mg+グリセリン20ml+氷酢酸10ml)
をつくり、1〜2%程度のKOH水溶液に、赤紫色になるまで加えます。この時、液性が酸性になってしまわないように注意が必要です(液色が黄色に近づく)。
 抱水クロラールを用いない場合は、1%ほどのKOH水溶液にアリザリンレッドSを直接適量溶かし、染色液とします。
 どちらも水は蒸留水を使っています。
 脊椎がしっかり染まるまで、透明化が不十分な場合は全体が赤紫色になるまで液浸します。


Fグリセリン置換

 0.5%KOH水溶液とグリセリンの混合液に入れます。グリセリンの浸透とKOHによるタンパク質分解で、透明度はかなりあがります。硬骨染色の過染色もここでだんだん抜けるので、過染色が激しい場合はここで抜きましょう。最初に3:1,次に1:1,そして1:3の比率で標本が沈むまで液浸します。最後にスクリュー式のビンに純粋なグリセリンとともに入れ,防腐剤にチモールを少量入れます。


 アセトンによる脱脂をB軟骨染色後、オキシドールによる漂白をFグリセリン置換前に行うこともあります。この場合、両方水溶性なので水に完全に置換するのを怠らないようにしなくてはなりません。


大体こんな感じで作業しています。エタノールとグリセリン代が洒落になりません(泣)


関連リンク

コラム:魚類透明骨格標本の作り方
透明骨格標本の作り方
透明骨格標本の作製
透明いきもの図鑑(宝島社 2010.6.21)


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